【ち】 「力」と「誓い」と
タイガーマスクのセリフに「力が正義なのではない、正義が力だ」という言葉がある。
最初にこのセリフを聞いたとき、私はまだお子ちゃまだったので、なんのことやらまったく理解できなかった。日本語を解釈する能力が低く、以下のように思っていたのである。
力が正義なのではない ⇒ 力≠正義
正義が力だ ⇒ 正義＝力
このような等式で考えると、まったく理解不能なのである。
しかし、解釈を変えると、理解可能になる。
力が正義なのではない ⇒ NOT(力⊆正義)
正義が力だ ⇒ 正義⊆力
正義というものは、力と呼ばれるものの一部を構成する。しかし、正しくない力はいくらでもあるので、力を無批判に正義と呼ぶことはできない。
と、そういうことだ。
私はアホなので、このことを理解するまでに、タイガーマスク好きの友人に何度も説明してもらわなければならなかった。
しかし、歳をとってくると、この解釈にも不満が出てくる。だいたい、正義などという主観的な価値観に基づく概念は、非常に定義しにくく、わかりにくいのである。
日本の憲法第19条には「思想及び良心の自由」がうたわれている。そんな中で、正義が力だと言ってそれを行使するのは、いかがなものか。とくに、自分の正義を振り回して他人に押し付けてくるやつほど、ムカつくやつはいないわけで。
正義が人によってブレてしまい明確に定義できないとなると、力の定義のほうを確認してみなければなるまい。
1.自らの体や他の物を動かし得る、筋肉の働き。
2.気力。精神力。根気。精根。
3.能力。力量。実力。
4.ほねおり。労力。努力。
5.たよりとするもの。よりどころ。
6.しるし。ききめ。おかげ。効能。
7.権力。腕力。暴力。
（以下略）
【広辞苑第四版より】
こうしてみると、力という言葉の意味にもばらつきがある。
ひょっとして、こんな解釈が成り立つのではないだろうか。
力が正義なのではない ⇒ 権力≠正義
正義が力だ ⇒ 正義＝よりどころ
自分の良心に従い、その良心を正しいものとして、自分の行動の規範・よりどころとする。
よりどころとしての「力」は、ふんばるための足場のようなものだ。その上に立ってはじめて、人はがんばることができる。そのよりどころを獲得するためには、自力で自分自身をしばらなければならない。
誓い、と言うべきか。
正義は力によって生まれるのではない。
正義は、誓いによってもたらされるのだ。
滝澤（2009/05/03）
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