【す】 「スケベ」と「救い」と
スケベという言葉の語源をご存知だろうか。
もともとは「助兵衛」と表記していて、これは「好き」に擬人化の意味をもつ「兵衛」がくっついたものがなまった、というのが俗説である。しかし、私は真の由来を知っている。
助兵衛の由来となった人物は、三人いる。三人そろって、スケベ戦隊エロレンジャーを結成していたことで有名である。
◎西島助兵衛
エロレンジャーの中でもリーダー的な存在。そのすさまじいスケベパワーは、平素から婦女子に恐れられていたが、宴席においてその真価が発揮される。
西島は、宴席で同席した婦女子のグラスを、なめる。べろべろとなめた挙句、グラス全体をくわえる。その巨大な口はビールのジョッキすらくわえられるほどのサイズであり、周囲の婦女子たちはドン引きすること間違いなし。
一緒に宴会に出席しただけで妊娠する、と恐れられている。
現在は大手広告代理店に勤務し、下請け企業の若い女性社員のグラスを日々なめているという。
◎川又助兵衛
空気を読めないことで有名な、恐怖のスケベマシーン。サーフィンで鍛えられた肉体は黒々としていて、体脂肪率は7%。
川又は、昼夜公私の別なく、さらには相手の性別に関係なく、常にスケベ発言をできるチャンスを虎視眈々と狙っている。一度ウケたら繰り返し言い続けるが、ウケなくても相手が反応するまで繰り返し言い続けるため、とにかく邪魔くさいことこの上ない。
「川又さん、好きなものは？」
「クンニ！」
そう公言してはばからない陽性スケベだが、もちろん婦女子にはウザがられている。
◎滝澤助兵衛
別名「沈黙のスケベ」と呼ばれる滝澤は、普段はスケベな様子を一切見せない。しかし、その心の内側では暗黒のスケベパワーがどろどろと渦巻いており、噴出のチャンスを狙っている。
一見すると人あたりが良く、周囲の男女からは「いい人、でも、どうでもいい人」と評価されることが多い。しかし、一旦その暗黒スケベパワーが開放されると、人々は口をそろえてこう言う。
「気持ち悪い」
そんな滝澤の得意技は、相手に気付かれないようにこっそり、しかしなめまわすように相手の隅から隅までを観察すること。さらには、着衣の上から見るだけで婦女子の体の線を正確に妄想する能力を有しており、滝澤自身は、その技を視力2.0アタックと呼んでいる。
エロレンジャーの活動は、むろんその他のヒーローたちと同じで、地球を救うことである。
スケベは地球を救う、という合言葉のもと、スケベパワーを駆使してカタブツ星人を撃退していたエロレンジャーであるが、三名が同じ婦女子を狙って衝突した挙句、その婦女子は別な紳士と結婚するという結末を迎えて、解散を余儀なくされた。
「地球なんて救わなくていい。俺に婦女子の救いの手を！」
エロレンジャー解散時に、滝澤助兵衛はこうつぶやいたという。
むろん、その声は聞き届けられることはなく、滝澤助兵衛に救いの手が差し伸べられることはなかった。
残念。
この物語は基本的にフィクションです。実在の人物・団体・あれやこれやとは、関係ないと思われます。たぶん。
滝澤（2009/04/05）
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