【き】 「危」と「気」と

 中川某という政治屋が、酔っぱらって公の場に出たことをきっかけに大臣の職を辞した。関係者の間では中川氏の酒癖の悪さは有名だったのだとか。
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 以前から知られていたことが、なぜ内閣の支持率が最低記録を更新しているこの時に発生したのか、なぜ秘書が止められなかったのか、疑問はいろいろ浮かんでくる。政権がらみの陰謀の臭いもぷんぷんとするが、それは、この際どうでもいい。

 危うい。
 何が危ういかと言えば、愚かな人間を自国の政治家として選び続けている国民の愚かさが、危うい。

 醜聞を起こして職責をまっとうせず、途中で役職や議員職を辞職した人間には、罰則を与えるべきだ。そして、その罰則は、そのような人間を選出した有権者にも及ばなければ意味がない。
 そこで私は、以下のように提唱したい。

1.役職や議員職を途中で放り出した国会議員は、以後10年間被選挙権を停止する。
2.上記議員に投票した有権者は、以後5年間選挙権を停止する。
3.上記議員が所属する政党は、以後5年間政党助成金の給付を停止する。
4.上記議員が国務大臣の場合には、任命した内閣総理大臣は即刻退陣する。

 このくらいのことをしなければ、この国の今の危うい状況は解決の糸口さえ見えないだろう。
 バカな国民がバカを国会議員に選ぶ。
 そんなバカは懲罰のために権利を停止するのが妥当なのだ。
 こういう過激なことを言っていると、気違い扱いされてしまうかな。

 そうそう、気違い、という言葉は放送禁止用語のひとつだ。
 政治的に正しい表現は、何だろう? 脳の不自由な方? それとも、心の不自由な方?

 まあいい。
 そもそも、「気」が「違う」とはどのような状態だろうか?
 「気」という字にはさまざまな意味があるので、漢和辞典で調べてみた。

1.のどから屈曲して出てくる息。
2.ガス状をしたもの。
3.人間の心身の活力。
4.漢方医学で、人体を守り、生命を保つ陽性の力のこと。
(学研「漢字」源第四版より)

 おおざっぱに、上記のような意味がある。
 気違いが「違って」しまっている「気」は、「3.人間の心身の活力」という意味であるのは間違いなさそうだ。
 心身の活力が違った方向に向いてしまったのが、気違い、ということだ。

 しかし、この「違った方向」というのがクセモノだ。
 違っている、違っていない、は基準あってものだし、基準というのは往々にして相対的で流動的なものだ。自分がまともな人間のつもりでいても、「違って」いる可能性は十分にある。
 私は、酔っ払って支離滅裂な記者会見をした政治屋も、それを国務大臣に任命した首相も、それを取り上げて解散だと大騒ぎしている政治屋どもも、それを偉そうに批評しているマスメディアも、それを無批判に受け入れている一般人も、みんな気違いだと思う。
 しかし、相手の人数があまりにも多すぎるので、相対的には、私のほうが気違いということになる。
 困ったものだ。

 そうそう。
 私が気違いである証拠を発見したので、お知らせしておこう。

 毎日同じ時間に通勤をしていると、よく同じ人と出会っていることに気づく。毎日のように会っていれば、顔を覚えて、識別するためにニックネームをつけるようになる。
 こんな感じ。

○ママ子集団
 私が住むアパートの前が、ちょうど幼稚園のバスの乗降場所になっている。私が出かけるときに、ちょうどバスに乗るために三人のママさんと総勢六人の子供が集まっている。六人のうち幼児三人がバスに乗り、残りの乳児三人はママに抱かれて家に帰っていく。
 そのうちのママさんの一人が、超かわいい。子供が甘えん坊で、いっつもママにしがみついている。子供と入れ替わりたい! と、つい不埒な妄想をしてしまう。
○足長ちゃん
 通学している小学生の中で、1人小学生離れした長身の女の子がいる。ひょろっと鉛筆のように長い足ですたすた歩きながらランドセルを背負っている姿は、周囲の小学生たちの中から浮き上がって異様に見える。

○イチゴちゃん
 いつも私が歩いて追い越す、バッグがイチゴの模様をした女性。服の雰囲気から、二十代だと思われる。イチゴのバッグ、すっごく目立つ。

○ドム子ちゃん
 長身ですらりとしていて、いつもミニスカートをはいている女性。ふくらはぎが張っていて、ブーツを履いていると膝下がとても大きく見える。いつも走って私を追い越していく。機動力高し。なので、ドム。

○ゲルマンさん
 身長2メートルはありそうな、巨漢の外人。電車で同じ車両に乗り合わせる。頑固そうな赤ら顔。絶対ドイツ人に違いない。

○マリさん
 体が鞠のようにまんまるな女性。私が勤務先の最寄り駅を降りてからすれ違う。歩きタバコしていて、すっげームカつく。

○カヨコさん
 マリさんと同じく、勤務先に向かう途中ですれ違う女性。めちゃめちゃスタイルが良くて、つい見とれてしまうほど。でも、顔がお笑いタレントの大久保佳代子さんにそっくり。
 とても残念。


 とまあ、そういうわけで、基本的には女性ばっかり見ている。下は小学生まで。
 しかも、唯一の例外は巨漢の外人男。

 そりゃあ、気違いと言われても仕方がない。より正しい表現は「変態」だが。
 世間的に見ても非常に危うい。捕まってしまうかも。


滝澤(2009/02/22)



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