『しおぶた君』

 不意に、豚の角煮を作ろうと思った。
 しかも、醤油をつかわずに。

 なぜ?
 と問われても答えようがない。ひらめいてしまったのだ。きっと、外宇宙からの塩豚電波を受信してしまったに違いない。

 で、久しぶりにお料理タイム。


 まず、味付けを考える。
 ベースは塩味にするのは決まっている。問題は、その他の味だ。スーパーで豚バラ肉ブロックを購入したついでに、そのまま使えそうなものを探す。
 ハーブを使うといいだろうか。
 野菜コーナーの脇に、生ハーブが並んでいる。ふむふむ。バジル、イタリアンパセリ、ローズマリー、タイム…。
 またまた電波受信。
 ローズマリーだ。よくわからないけど、「ローズマリーの赤ちゃん」なんて話もあったじゃないか。ローズマリーがいいにちがいない。でも、一種類だとアレなので、もう一種類。ど、れ、に、し、よ、う、か、な。はい、イタリアンパセリに決定。
 塩にもこだわって、岩塩を購入。

 帰宅後、いよいよ料理開始。
 以前書いたことがあるが、蜂蜜にふくまれる成分が、豚肉をやわらかくしてくれるらしい。なので、蜂蜜を塗り、ローズマリーの葉をむしって肉になじませ、一晩寝かせる。
 翌日、七センチくらいの幅で肉を切り、フライパンで表面を焼く。余計な油が落ちて、軽く焦げ目がついたところで、鍋に投入。鍋には、岩塩、ローズマリーの束、イタリアンパセリの束、コリアンダー少々、にんにく少々。
 あとは、あくをとりながら、ひたすら煮る。

 しかし、煮込むうちに、いやな予感が。
 部屋に漂い始める、ローズマリーの香り。
 どこかで嗅いだことのあるにおい。
 そう、これは……漢方薬のにおいだ!


 味見をしてみる。塩味は悪くない。肉もやわらかくなってきた。煮汁も、手間をかけたおかげで透明度が高い。すばらしい出来だ。
 しかし。
 ああ、いとしのローズマリー。
 君は個性的すぎるよ。


 しおぶた君 vs ローズマリー
 無制限一本勝負。
 勝者:ローズマリー(16時間32分/超芳香固め)



滝澤(2003/04/20)



前へ  次へ 


| 紡ぐ | 叫ぶ | 呟く | 繋ぐ | 跳ぶ | 企む | 語る | 表紙 |





このページの作品に対するご意見・ご感想などは、E-Mail : maniactaki@gmail.comまでお願いいたします。
※スパム対策のために「@」を全角にして掲載しています。半角に直してお送りください。