『死に関する結論』
私は、死にたい。
正直なところ、死にたいと思わない人間の気が知れない。普通は、誰でも死にたいと思っているはずだ。全面的に死にたいわけじゃないけど、心のどこか一部分では、やっぱり死にたいと思っている。
何よりも、自分が嫌いだ。
愚かで軟弱で無知で無節操で、どこをとっても美点のかけらもない、何もかもダメな自分が大嫌いだ。自分の名前が、「殺したいやつリスト」の最上位に載っているのは、間違いのない事実だ。
さて。
そうなると、私には選択肢がふたつしか残されていない。本当に自殺をして死んでしまうか、それとも許しがたいダメ人間のままで生きつづけるか。
死にたければ、死ねばいい。
それも、選択肢のひとつ。
でも、その選択をするのであれば、自分が死に付随するさまざまな不利益を甘受するしかない。死ぬときは苦しいだろう。死んだらうまい酒は飲めなくなる。死ぬのに失敗して心身への障害を背負い込むことになるかも知れない。
それが自身の選択なのであれば、そういった不利益やリスクをすべて甘受する必要がある。
逆に、生きつづけることを選択したのであれば、それに付随するさまざま不利益を甘受するしかない。自分のクソバカっぷりにはうんざりするだろう。無数のうんざりすることに囲まれて生きていくことになるだろう。いずれ、自分には制御のできない力で、自分の命は強制的に終了させられるだろう。
しかし、それでも、生きることを選択したのであれば、それらの不利益とリスクを甘受しなければならない。
簡単なことだ。
どちらの不利益を受け入れるか。
よく、「自分はなぜ生きているんだろう」という疑問を耳にする。
答えはただひとつ、「そうすることを選んだからだ」ということになるのではないだろうか。イヤなら、その気にさえなれば、いくらでも死ぬことができるのだから。
よく、「自分はなんのために生きているんだろう」という疑問を耳にする。
答えはただひとつ、「理由や意味なんて存在しない」ということになるのではないだろうか。理由や意味がどうあれ、私たちには常にふたつの選択肢しか用意されていないのだから。
もろもろの不快さを辛抱して生きるか。
もろもろの愉快さを放棄して死ぬか。
結論。
私は、死ぬまで、生きるだろう。
自分の愚かさを嘆きながら、生きるだろう。
自分の弱さを憎みながら、生きるだろう。
不快なことがゼロにならないことに苛立ちながら、生きるだろう。
不快なことを減らすように努力しながら、生きつづけるだろう。
それが、私の選択だ。
本日、私は三十二歳になった。
まだすべてを受け入れて陽気に「生まれてきて良かった」と言えるほどじゃない。
でも「死にたい」などとは、もう言うまい。
滝澤（2003/01/30）
このページの作品に対するご意見・ご感想などは、E-Mail : maniactaki＠gmail.comまでお願いいたします。
※スパム対策のために「＠」を全角にして掲載しています。半角に直してお送りください。