『孤独よ今夜もありがとう』
私は言葉を並べることで、いろいろな事柄を伝える努力を重ねてきた。
でも、私の言葉は、所詮は「私にとっての理屈」であって、他人の心に届くことはない。
無力であること、この上ない。
そもそも、なにかしら共通のものがあるからこそ、コミュニケーションが成り立つ。大げさな言葉を使えば、「普遍的なもの」ということになる。
たとえ他人の言葉でも、普遍的なものであれば私の心に届く。
だから、私の言葉も、普遍的でさえあれば、他人の心に届く。
そう、思っていたのだが。
どうやら、私が思っていた普遍性など、ちゃちなもので、言うなれば「独善的普遍性」とも呼べるようなしろものだったらしい。
私の言葉は、届かない。
言葉が無意味だと悟った瞬間、私は言葉を捨てて、行動した。しかし、その行動でさえ、「独善的普遍性」以外のなにものでもなかったのだ。
苦しんでいる人を見ているのは、つらい。
それが親しい人間であればあるほど、つらい。
でも、私にできることは、何もない。
きっと私は誰の力にもなれず、独善的普遍性を振り回しては他人を傷つけ、時には失笑を買ったりするのだろう。
別に、もう、誰かを傷つけることなど、恐れない。いくら笑われても構わない。
ただ、無力なことが、つらい。
きっと、いつまでも、ずーっと無力でありつづけるのだろう。
私は、私の目でしかものを見ることができず、どんなに努力をしても私の枠からはみ出すことはできない。
それは、無力であると同時に、ひどく孤独だ。
この解消できない絶望的な孤独と付き合っていくことが、唯一の道なのだな。
孤独が、前提なのだ。
ならば、孤独に礼のひとつも言ってやらねばなるまい。なにせ、長い付き合いなのだから。
滝澤（2002/10/14）
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