『罰』
私はもうすぐ、三十一歳になる。
この一年は、最悪だった。
新しい始まりと。
せっかくの可能性を投げ捨ててしまった愚かさと。
救いようのない頑迷さと。
自分の能力に対する失望と。
絶望的な運のなさと。
腹のまわりについた贅肉と。
抜け落ちていく頭髪と。
そんなものに彩られた一年。
自分は、強くなったつもりだった。
自信を持って生きていくことができると思っていた。
でも、そんなのは、夢。ただの虚勢でしかなく、いつでも怯えて、不安で、苛立って、うんざりしていた。
ひとつだけわかることは、それは私が私であることによる罰なのだ、ということ。
私が私である以上、それは避けられない。
ある人は言う。
「おまえは、そういうとこを直したほうがいいよ」
直そうとしなかったことなど、一度もない。いつだって、どうにかしたくて、ジタバタしてきた。
でも、正しい答えなど、出せなかった。どうすればいいかわからず、けっきょく何ひとつできなかった。
それは私の愚かさの結果。
愚かさを補うための学習も、うまくいかなかった。
それは、自分のどこがどう間違っているのか、自分の問題が何なのか、正しく把握することのできないせい。
そう、これも、私の愚かさの結果。
ある人は言う。
「そんなことないよ。大丈夫」
その人が私という人間を信じてくれている一万分の一でもいい。ほんのわずかでもいいから、私自身が自分を信じてあげることができれば。
自分への失望と、救いようのない頑迷さが、私を縛る。
何度、自分を信じようとしただろうか。何度、前に進もうとしただろうか。
しかし、努力は報われなかった。
努力が足りないのか、努力のしかたが悪かったのか、私にはわからない。
やはり、私という人間の愚かさの結果だ。
私が私である、ということ。
それは、私が何も問題を解決することができない愚かさの持ち主である、ということを意味している。
私は、私である以上、その愚かさから抜け出すことなどできはしない。
愚かさは罪で、当然の帰結として、私は罰を受けている。
私は蟻地獄に落ちて、抜け出せなくなっている。
正直言って、私という人間は、以前よりも悪くなっている。一年前と比べて、明らかに退歩しているのだ。私が愚かさから抜け出せなければ、おそらく、これからの一年は、もっと悪くなるだろう。
それが、怖いのだ。
人は幸せになる能力があると言うが、それは嘘だ。
願えばきっと叶うなんて、たわごとだ。
世界は誰か特定の個人を中心にまわっているわけじゃない。だから、特定の個人が幸せになるように保証されているはずもなく、どんなにイヤだイヤだと思っていても、そんな個人の好悪の感情など、なんの意味もないのだ。
願おうが何をしようが、起こることは起こるし、起こらないことは起こらないだろう。
子が生みの親を選べないように、私は現実に対しては何ひとつできることがない。
何もできないのなら、いったい、私はどうすればいいんだ？
滝澤（2002/01/26）