『臆病な人』

 何かをしなかった、ということを悔やむのと、何かをしてしまった、ということを悔やむのと、どっちがいいんだろう?
 いや、そんな質問は、あらためてするまでもない。
 何かをしたほうが、何もしないよりは千倍もマシ。

 でも、ときどき臆病な自分に気づくことがある。
 何もしなくてもダメ。何かをしてもダメ。結局どうやってもダメならば、どうして努力する必要があるのだろう。
 無駄になってしまった努力は喪失感になり、絶望感になり、足を萎えさせる。
 次からまた新たな何かをしようという気力が失せていく。
 どうせダメなんだから、何やったって変わらないよ。
 そんなふうに自分の臆病さを正当化して、臆病な自分に居座ろうとするんだ。
 自分はダメな人間だから、と、そう言うほうが、失敗したときの言い訳にできる。だから、自分が弱い人間であるということにすべての理由を押し付けて、そこに居座ろうとする。

 でも、そこは居心地のいい場所のようでいて、実はすごく居心地が悪い。
 本当にそこに居続けたいのであれば、誰も止めないだろう。好きなだけそこに居てくれ、と言うだけだ。
 他人に、自分を変える力はない。
 その力を持っているのは、自分自身だけ。
 だから、ここから抜け出すために、やはり何かをしなければならない。

 そんなことは、わかってる。
 わかってるんだ。
 でも、どうしようもなく臆病な自分が、また言い訳を用意して待ち構えている。

 ほーら、ダメだったろ?
 やっぱり無駄なんだよ。どうせその程度の人間なんだからさ。
 もう、あきらめなよ。
 何したって無駄さ。

 それが、腹立たしい。

 臆病さに負けて、前に進めなくなるときもあるだろう。
 でも、決してそこにいたいわけじゃない。

 どうすれば、臆病さに勝てるのか。
 それは、きっと、私の永遠のテーマなのかも知れない。


滝澤(2001/12/02)



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