『不確定な未来を想い涙する』
未来は、不確定である。
何をいまさら、と思うかも知れないが、この事実を認識するチャンスはさほど多くない。我々はいつも、数秒後から数日後、果ては数ヵ月後から数年後までの自分の姿を予測しながら、生きている。
実際には先を見通すことのできない闇の中にいるのだが、見通せていると思いたい。そうでなければ、怖くて先に進むことができない。
そんな思いが、我々を反射的な「未来の予測」に駆り立てるのだろう。
十秒後の私は、きっと、コンピュータの画面に向かったまま、この文章を書きつづけているに違いない。でも、それさえも、不確定だ。もしかしたら、地震が起きて家具の下敷きになっているかもしれない。そんな大げさなことは起きなくても、突然かかってきた電話の呼び出し音に驚いて、いったい誰だろうと首をひねっているかもしれない。
未来は不確定だから、遠い未来の予測であればあるほど、的中率は低くなる。
それでも、私は、未来を、想う。
明日は？
来月は？
来年は？
その予測される未来が暗澹としたもので、ときに未来へ進む意欲が失われてしまうこともある。
今度こそ、きっと、大丈夫。
ずっと自分にそう言い聞かせてきて、結局だめだったとき。
だめだったという事実に、私は絶望する。
次も、きっと、だめだろう。
そんなふうに未来を想い、私はくやしくて涙を流す。
もう、こんな繰り返しは、イヤだ。
あまりに不確定であてにならない予測を、信じずにはいられない。
この、弱さ。
先へ進むための予測が、先へ進むための意欲を奪う。
この、矛盾。
でも、よく考えてみると、その繰り返しで私は生きてきたのだとも言える。
見苦しく泣き叫びながら。
そうすることで、私自身が目指している「未来」から余計に遠ざかってしまう。そう知りつつ。
不幸が好きは馬鹿者は、そうやって絶望してきた。
そしてそのたびに、「それでも、もしかしたら次こそは…」という期待を抱いて。
馬鹿も、ここまでくると芸術的だ。
次なんか、ないんだよ。
不確定なんだから。
ある程度自信を持って予測できるのは、ごく近い未来だけ。それ以上遠い未来に依存しながら、自分が勝手に作り上げた未来のイメージに振り回されて、泣いたり、笑ったり。
ほんと、馬鹿。
「今」がイヤで仕方がない。
だからと言って、「未来」に逃げるのはやめよう。
私には、「今」しかないのだから。
滝澤（2001/08/12）
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