『消えてしまえ』
感情が、邪魔だ。
感情など持って生まれてこなければ、良かった。
感情のおもむくままに行動すれば、他人を傷つける。
感情を押し殺して生きれば、自分を傷つける。
もしもどちらかを選べと言われたら、私は後者を選ぶだろう。なぜなら、他人の傷ついた姿は、私自身をも傷つけるから。他人も私も両方が傷つくくらいなら、私ひとりだけが傷ついていたほうがマシだ。
ある日を境に、私は自分が傷つくことを恐れなくなった。いくらでも傷ついてかまわない。どうせ避けられないことならば、いちいち怯えていたらキリがないではないか。
畜生。
そんなの、ウソだ。
建前にすぎない。
傷つくのは、イヤなんだ。
でも、それ以上に、誰かを傷つけるのがイヤなんだ。
ああ、今、この感情を表現したら、相手を傷つけるのだろうな。
そうわかる瞬間がある。
感情を表現したいという強烈な衝動が、押し殺さなければならないという意識とぶつかりあって、私はゆれるのだ。
そして、多くの場合は感情的な衝動をおさえ、他人を傷つけることを回避することに成功する。
が、たまに、おさえきれずに感情を表現してしまうときもある。
私の感情を受けて相手が苦しむ姿を見、私は絶望的な気分になるのだ。
私には、他人を傷つけることしかできない。
好きでそうしているわけではないのに、他人を苦しめてしまう。
私は、害悪なのだ。
消えて、しまえ。
滝澤（2001/05/05）
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