『やさしさというもの』
私は、よく、やさしい人と言われる。
しかし、そう言われるたびに、私は心苦しくなるのだ。
「私はやさしくない」
「臆病なだけなのに」
「弱いだけなのに」
私の口から、何度も繰り返し吐き出される言葉。
ときに人はそれを謙遜と呼び、ときに過小評価と呼ぶ。
何が事実なのか。
私には、わからない。
私は、いつも怯えている。
嫌われたくない。
だから、いつでも他人の表情をうかがい、相手が望むものを与えようと、胃が痛くなる思いをしながら、笑顔を作る。
その姿を見て、人は「やさしい」と言う。
もしも、私が実感している私自身の姿と、他人の目から見た私の姿が、まったく違う場合、私はどちらを信じればいいのだろう。
私は、間違っているのか。
それとも、私は正しく、他人の判断が間違っているのか。
多数決でいけば、私が間違っている、ということになる。
しかし、そう言い切ることは、今の私にはできない。
ある人は、私にこう言った。
「あなたはやさしくて、でも、ちょっとだけ冷たい」
やさしさとは、何だろう。
冷たさとは、何だろう。
いつか、わかる日がくるのだろうか。
いつの日か、自分の本当の姿を知ることができるようになるのだろうか。
自分という矛盾を抱えた存在を誇り、胸を張って生きることができるようになるのだろうか。
いつの日か、私は。
滝澤（2001/02/25）
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