『三十路の辞』
この日、私は三〇回目の誕生日を迎えた。
が、別にどうということはない。二九回目だろうが三〇回目だろうが、誕生日には違いないのだ。
が、今年は、なんとなく、いつもと趣向を変えてみようと思う。
毎年、誕生日になるたびに自分自身に問いかけている質問を、実際に言葉にしてみよう。
質問：この一年、心の中で何人の人を殺しましたか？
回答：数知れず。
質問：この一年、何回、自分自身を殺しましたか？
回答：何度も。
質問：この一年、その前の一年よりも、自分を好きになれましたか？
回答：少しだけ。
質問：この一年、その前の一年よりも、自分に対して自信を持てるようになりましたか？
回答：わずかながら。
質問：まだ、世界を憎んでいますか？
回答：はい。
質問：まだ、世界を許すことができませんか？
回答：はい。
質問：生まれてきて良かったと、思えるようになりましたか？
回答：ちょびっとなら。
この数年、なんの前進もなかった私にとって、このわずかな前進は大きい。
すべては、私を支えてくれている人たちのおかげである。
三〇歳になったこの日、電話やメールを通して、祝福の言葉を与えてくれた多くの人に、心から感謝したい。
これほどまでに不完全な私を大切に感じてくれる、すべての人に。
約束しよう。
私は、ここにいる。
ここで、信頼に足る人間になれるよう、努力を続けます。
三〇年分の「ありがとう」を。
たったひとつの、「ありがとう」を。
滝澤（2001/01/30）
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