『カラオケ』
私はカラオケが嫌いである。
というよりも、カラオケが象徴する文化が嫌いである。
別に、歌うのがイヤなわけではない。腹の底から声を出すのは気持ちのいいことであり、開放感もある。素晴らしいではないか。
何がイヤかと言えば、「この歌はこう歌うべき」というクソ常識がイヤなのだ。
たとえば、森進一の歌を歌うとする。
いわゆる「カラオケ好き」を自称し、「自分は歌がうまい」と信じきっている人のほとんどは、モノマネで歌う。わざとかすれさせた声。突き出した下唇。しかめ面。顔をゆすって作るビブラート。
その創意のなさ。
頭が悪いとしか言いようがない。
そういう連中に限って、自分の声で、自分の歌い方で森進一の歌を歌おうとする人間を見ると、「違うんだよ、この歌はこう歌わなきゃ。俺、うまいから聞いてな」などとほざいてマイクを奪うのだ。
その挙句に見せられるのは、モノマネ芸人が真似をした森進一の真似。
最低だ。
似た感じのもので、パラパラがある。ディスコなどで、決まったフリをみんなで踊るやつだ。
踊りというのはリズムを感じ、自然に体が動き出すような昂揚感があるものではないのか。どこの誰かが決めたかもわからないようなフリを、「この曲はこう踊る」などと押しつけられて踊るものではないはずだ。
創意性、皆無。
その状況に、私は苛立ちを通りこして、恐怖を感じる。
情報があふれている。
が、それは気のせいなのだ。
価値のある情報は、驚くほど少ない。メディアから垂れ流しにされている「これはこうあるべき」とか「今年はこれが流行る」というものは、情報とは呼べないものだ。悪く言えば洗脳、良く言っても情報操作以上のものではない。
そういうものを除いたら、メディアから流れているものは、どれほどスカスカに見えるものか。
いや、そういうものを信じるのは個人の自由だ。
だから、お願いだから、私のようにそれを信じていない人に、「常識」として押し付けないでくれ。
滝澤（2000/07/02）
このページの作品に対するご意見・ご感想などは、E-Mail : maniactaki＠gmail.comまでお願いいたします。
※スパム対策のために「＠」を全角にして掲載しています。半角に直してお送りください。