『おにいちゃん』
私はおにいちゃんと同い年である。
おにいちゃんの姿を見るたびに、自分と同じ年齢の人間が努力している姿に少なからず感動してきた。
その「おにいちゃん」こと、大相撲の横綱若乃花が引退した。
なんとも寂しいものである。
普通の社会生活をしている人間としては、私くらいの年齢はまだ「尻の青い若造」だが、少しはオトナの社会に適応できてきている世代、と見られることが多い。言うなれば、スタートラインにいるわけだ。若さゆえの暴走、あせり、そんなものから卒業して、どっしりと物事に構えることができるオトナになろうとしている。
私はそういう年齢にさしかかっていながら、しかしオトナにはなりたくなくて、あれこれジタバタとしている。そんな私を尻目に、おにいちゃんは大相撲の頂点を極め、引退し、「親方」になってしまった。
むろん、比較すべき問題ではないと、わかっている。
しかし、自分がなんともグズのような気がしてならない。
そう、この感じ、テニスプレーヤーの伊達公子が引退したときにも感じた。彼女も、私と同い年である。
引退、指導者としての再スタート。
スポーツという、年齢的なピークの訪れが早いものを選んだのだから、それは当然なのだと言える。だが、実績は残した。
仮に私がこのまま小説を書きつづけたとして、死ぬまでに世間から認められる形での実績を残すことができるだろうか？ 不安である。かと言って、それから逃げるわけにもいかない。
そして、今日も私は駄文を書きつづける。
滝澤（2000/04/02）
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