『キックボードを撲滅せよ』
キックボードというやつが流行している。
小さい一輪スケートボードに、ハンドルがついたようなもの。乗る部分に「ＲＡＺＯＲ」とか書かれている、アレだ。
こいつは、タチが悪い。いや、キックボードそのもののタチが悪いわけではない。乗っている連中のタチが悪いのだ。
ゆえに、これは撲滅せねばならない。絶対に。
場所は、東京・池袋駅構内。
改札のある地下通路を、走り抜けて行くキックボードが一台。人ごみの中を、縫うように、猛スピードで。私の脳裏を、母親の顔がよぎる。私の母は、同じ池袋駅を歩いている最中に、走ってきた男に足をひっかけられて転倒、大腿骨を骨折した。同じような事故は、必ず起きる。そして、よりスピードの出ているキックボードは、はるかに危険の度合いが高い。
ゆえに、キックボードを撲滅せよ。
場所は、近所のコンビニエンスストア。
レジで精算している私の脇を、キックボードに乗った男がすりぬけていく。狭い店内には、私以外に何人も客がいる。
もはや言うべき言葉はひとつだけ。
キックボードを撲滅せよ。
擁護する人間は、こう言うかも知れない。
「それは乗っている人間の問題であって、キックボードの問題ではない」
「一部の愚かな人間のために、すべてを否定するのは無茶だ」
と。
だが、許されてはならないのだ。
そうやって、「一部の愚かな人」は許容される。許容された連中は、頭に乗って愚かな行為を繰り返す。やがて、「それはやっても許容されることなのだ」と勘違いする人間が増殖して、どんどん無法状態になっていくのだ。そして、最後には、なし崩し的にその無法状態が「普通だ」と言われるようになる。
携帯電話使用の無法を見よ。
最初はさかんに言われつづけた言葉も、いまや色あせてしまっている。いくら車内放送で「他の客の迷惑になる場合があるので…」と言っても、もはや空虚な題目にしか聞こえないではないか。
人に迷惑をかけないのならば、かまわない。
好き勝手に、やっていればよい。
が、他人に迷惑をかけることは、許してはならないのだ。絶対に。
撲滅せよ。
それが「普通」になる前に、この世から抹殺せよ！
滝澤（2000/02/06）
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