『リアルな夢』
とてもリアルな夢を見た。
目覚めた瞬間、自分がどこにいるのかも判らないような状態。
「おや、ここはどこ？ つい今しがたまで、実家の茶の間にいたはずなのに……」
よく見ると、そこは一人暮しのマイルーム。締め切ったカーテンの向こうからは陽光がもれ入ってきている。
場所がわかっても、状況は改善しない。なぜマイルームにいるのか、理解できないのだ。寝巻きを着ていて、ベッドの上にいるはずはないのだ。なぜなら、私は実家にいて…。
「あ、夢だったんだ」
気づいたのはいい。しかし、時間の感覚がまったく狂っている。時計は12時すぎ。外は明るいから、昼の12時ということになる。でもいい、今日は連休の最終日で……。
「待て。夢の中では、確かに連休の最終日だった。しかし、あれは夢だったんだ」
頭をひねる。今日を特定する情報は、何もない。さかのぼって、昨日は何をしていたかを考えてみよう。昨日は大学時代の友人たちと私の田舎の方面に旅行していた。私の田舎ということで、私が食事する場所などをコーディネートしていたのだ。そして、その後で実家に帰って……。
「うわ、まだ夢の中の出来事を考えてる」
ここまでくると、少々怖くなってくる。自分はどうなってしまったのか。記憶がなくなってしまったのか。
とりあえず、夢の出来事を行きつけるところまで思い出してみることにしよう。
旅行に行った。その前は列車に乗っていた。その前は待ち合わせをしていた。その前は……ふむ、ここがスタート地点のようだ。そのさらに前を考えれば、きっと今がいつなのかわかるはずだ。
さあ。戻って来い。記憶よ。
…夜更かし。
そう、昨日は夜更かしをしていた。１２時過ぎに目覚めるのも納得できる。
その前は、そう、仕事だ。仕事が長引いて、帰宅も遅かった。
と、その瞬間に、記憶が一気に戻っていた。昨日やっていた仕事の内容。時間ギリギリになって、やり残した仕事。今日、やらなければならない仕事…。
完全に記憶を取り戻す。
今日は水曜日。やらなきゃならない仕事はいっぱいある。でも、今は12時。
平日。
12時。
たまった仕事。
うぎゃ。
こりゃ、徹夜かな。
滝澤（1999/10/31）
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