『新聞勧誘は二度チャイムを鳴らす』
新聞勧誘が来る。奴らはだいたい、部屋のチャイムを二回鳴らすので、すぐに判るものだ。来ると、よほど居留守を使ってやろうという気になるが、万が一宅急便か何かだとまずいので、いちおうは応対しなければならない。今住んでいる部屋はドアホンというやつがついていて、こういう時は非常に便利である。
「ピンポーン、ピンポーン」
「はい」
「あ、滝澤さん。配達所の者なんですが」
「何の配達所ですか？」
「いや、配達所の者です」
「ですから、何を配達する所なんですか？」
「はい？」
「はい？ じゃなくて、何の配達所なんです？」
「…新聞なんですけど」
「うちは新聞はいりません、ガチャ」
ムカツキ度２０％。
その３時間後。
「ピンポーン」
「はい」
「お届けものです」
「はい」ハンコを持って、ドアを開ける。と、汚いツラをしたオヤジが顔を出す。
「いや、今、新聞入ってない人のところに回ってるんだけど…」
「お届けものは？」
「今契約してもらうと、このテレホンカードを…」
「お届けものは？」
「だから、このテレホンカード…」
「あなた、『お届けもの』っていう言葉の意味、知ってます？」ドアを閉め、カギをかける。
ムカツキ度５０％。
さらにその１時間後。
「プルルル」電話が鳴る。
「はい、滝澤です」
「あ、こちら、朝売新聞の営業所ですが、来月から３ヶ月のご購読の契約をしていただきましたでしょうか」
「いいえ」
「……あ、そうですか…」
電話を切る。あのゴミ勧誘員野郎は、私の所と契約したというウソを仕立て上げ、契約の報酬をせしめて行ったのだ。
ムカツキ度、臨界点突破。
とにかく、ムカつく。ああいうゴミのような連中を使って勧誘をする新聞など、誰が読むものか。連中を使うことによって新聞社そのものが品位を落としているのに、気付かないのだろうか。新聞など、どうせ中身は似たり寄ったりなのだから、何だっていいのだ。読みたい時には駅でもコンビニでも、どこでも手に入る。とにかく、私の前にだけは姿をあらわさないで欲しい。
休日。
私は小説を書いている。
奴等は二度チャイムを鳴らして、私の執筆作業を妨害する。まったく、素晴らしい人たちだ。くたばっちまえ。
滝澤（1998/08/23）
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