『気力』
最近、気力がない。
作品を書く気力はもとより、生活に必要ないろいろなことをする気力も湧いてこない。引っ越し以来、溜まっている用事が山のようにあるのだ。このままではまずいので、その原因を考えてみる。
引っ越しの前は親と一緒だったのだが、作品を書くには不適当な環境だったと感じていた。作品を書いている最中にあれこれ声をかけられたり、親の話し声が気になったり。しかし、不適当だと感じながらも、多少は書くことができたのだ。今は書けない。なぜか。それは、いつでも邪魔されずに書けるようになったからだ…。
不思議なもので、私は今、中国を旅していた時のことを思い出している。あちこちのホテルを転々としながら、異国を散策した。ぶらぶらして、ホテルに戻って、風呂に入って、テレビで中国語のニュース番組を理解不能のまま眺める。眠くなったら寝る。
制約は、ない。
今、部屋はこぎれいで、これまでは持っていなかったベッドなどというものがあり、どことなくホテルの部屋をほうふつとさせるものがある。その影響があるのかも知れない。 とにかく、仕事のために目覚しで起きる以外、今の生活には何の制約もない。仕事で疲れたことを言い訳にして、何もしない。明日できることは、明日にまわす。
そんなだらけきった生活で、気力なぞ湧くはずもない。
私の友人の一人が、こんなことを言っていた。
「生活に勢いを与えているのは、目覚し時計だけだ」
なるほど。目覚し時計という制約がなければ、私は仕事にさえ行かなくなってしまうだろう。制約がなければ、人は何もできないのかも知れない。
作品を書く時も、考えてみればそうである。締切がなければ、作品は仕上がらない。
そろそろ惰眠をむさぼるのも、終わりにすべき時だろう。
いかに自分に制約を課すか。
いかに締切を作るか。
そこにカギがあるのかも知れない。
滝澤（1998/04/06）
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