『ジンクス』
誰にでも、ジンクスというやつがあるのではないだろうか。
私はバリバリ科学的な親に育てられたために、あまりそういうものは信じないほうなのだが、それでもいくつかある。
ひとつは、不死。
私は、一発で廃車になるような自動車事故に遭っても、かすり傷ひとつ負わなかった。ほかにもいくつか重なっていて、私は「不幸な事故」では死なないと信じている。クジとかには絶対に当たらないが、生死の関わるレベルではツイているのだ。根拠はないのだが、そう信じていると気楽なものである。モスクワで睡眠薬強盗に遭った時も、不思議と死ぬ気はしなかった。まあ、誰でもそうか。
もうひとつは、１年周期。
正月に起きたことは、１年間常につきまとい、年末で収束する。正月に風邪をひくと、その年は年間１０回も風邪で寝込むわ、入院するわ、大騒ぎになる。年末の休みに風邪で寝込んで、一年をしめくくるのだ。また、正月におせち料理をひっくり返すと、車はひっくり返るし、階段からは落ちるし、踏んだり蹴ったり。大晦日に再度料理をひっくり返して、見事にしめくくる。今年は風邪の年だ。海外に出るまで、月１回ペースで風邪のために寝込んでいたし、海外では下痢に悩まされ続け、モスクワでの麻薬病棟入院で、極まった。今も、風邪で喉が痛くて仕方ない。たぶん、今年はもうひとヤマきそうだ。
そして、最後は幸運の５フラン硬貨。以前、フランスへ旅行に行った人からもらったものなのだが、偶然、製造年が私の生まれた年と同じだった。当時はどうということもなく財布の中に入れておいたのだが、それ以来、なんとなく全体的な調子がいい。いや、ただ、そういう気になっているだけかも知れない。何しろ、海外旅行で強盗に会うくらいだし。それに、相変わらずモテないしなあ。
あ、なんだか本当に効果がないような気がしてきた。モスクワでひどい目にあったのは、この硬貨のせいだったりして……。
だれか、『幸運の５フラン硬貨』引き取ってくれないかなあ…。
滝澤（1997/12/07）
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