『ビザとり物語』
私の思惑。
７／９、中国大使館とモンゴル大使館にビザ申請に行く。７／１５、両国のビザ取得。７／１７大阪一泊。７／１８大阪発の船に乗船。７／２０上海着。
そのつもりで、７／９に中国大使館を訪問。すごく混んでいる。よく判らないまま申請書を書きこんで、窓口の前にできた長い列に加わる。順番がきて書類を出すと、パスポートを出せという。パスポートも出すと、窓口の向こうから「旅券預かり証」なるものを渡された。
おや？ まさか、ビザが出るまでパスポートは預けておくものなのか？ そんな話は聞いてないぞ！ 私の「中国とモンゴルを同時に申請する」という予定はどうなるのだ？
旅券預かり証には、１６日に取りに来い、とある。モンゴルのビザ取得にも１週間ほどかかるはずなので、１６日に受け取ったのでは、明らかに１８日大阪発は手後れになる。どうにかせねばならない。
「急いでいるのだが、どうにかならないか？」ときくと、手数料を倍額払えば翌日の交付が可能だという。もはや、値段をどうこう言っている場合ではない。翌日交付をしてもらうように依頼する。
翌１０日の１０時に再度中国大使館を訪問。受け取りのために窓口に並んだが、順番がまわってくると「受け取りは２階」と言われる。２階に行くと、１階の窓口とは比べものにならないほどの大行列。文庫本を読んで時間をつぶし、どうにか待望のビザを取得。
そのままモンゴル大使館へ直行。地下鉄を乗り継ぎ、大使館に到着したのが１１時５０分。しかも、こちらにも行列ができている。午前中の受け付けはしてもらえそうにないので午後また来ようと思った瞬間…。
モンゴルの国民の休日に「革命記念日」というのがあるらしい。それが７／１１のため、大使館の業務は１０日の午後から休みになるのだという。ということは、この瞬間を逃すと次の申請は１４日になってしまうのだ。それでは、間に合わない。なんとかせねば。
とりあえず申請用紙を記入して列の後ろに並んでいれば、受け付けてくれるかも知れない、という淡い希望を抱き、申請用紙を探す。
ない。
列の後ろのほうにいた人（あとで判ったのだが旅行会社の人だったらしい）に申請用紙のありかを聞くと「あれ、いつもここに置いてあるんですけどねえ…」と言う。所定の場所に用紙がないと見ると、その人は自分の鞄を床の上に広げて、自分の鞄の中に入っていないかどうか探し始める。でも、やっぱり出てこない。「すみません、ないみたいです…いつもは予備を持っているんですけど」などと頭を下げられた日には、私はもう、どうすれば良いのやら。と、困ったのを見てとったのか、窓口に言ったほうがいいですよ、と言ってくれた。いやあ、なんていい人なんだろう。
行列の途中に割り込ませてもらって、窓口に申請用紙を補充してくれ、と頼む。と、窓口のお姉ちゃんが内線電話をかけてモンゴル語で二言三言。電話を置くと、「少し待っててください」と言ってにっこり笑う。かわいい。
すっかり安心した私は、申請用紙が出てくるまで、かわいい窓口のお姉ちゃんを観察することにした。驚いたことに、一人で窓口業務をすべてこなし、その上外線電話までとっている。そういえば、私が電話した時に出た人の声は彼女の声と似ている。すごい。
さて、１２時もはるか過ぎ、１時が近くなってきた頃、ようやく窓口の前の行列がなくなった。しかし、申請用紙は出てこない。お姉ちゃんも、さすがに疲れたらしい。そりゃあ、昼飯抜きで仕事やってれば、辛くなる時間だ。あまり仕事を続けさせるのは申し訳ないので、もしも１４日申請、１７日取得が可能なのであれば、それでもいいと思う。
窓口で聞いてみると「緊急扱いになるのでお金はかかりますが、できますよ」とにっこり。うーん、やっぱりかわいい。これ以上働かせるのも申し訳ないから、帰ろうと思ったその時。
「もう少し待っていてくださいね。もう申請用紙が来ると思いますから」とお姉ちゃんが言う。
「いやあ、でも、もう時間も過ぎていますし……」
「いいんですよ。休み前だから、全部終わるまで仕事しますので」と言って、にっこり。
かわいい！
それから待つこと５分。申請用紙が出てきたので、記入を開始する。処理待ちをしていた人が、「よかったですね」と声をかけてくれる。なんか、いい人ばっかりじゃないか。すばらしい。
私が申請したのは１時。さすがにお姉ちゃんは疲れた表情で、大きくため息をついていた。でも、私が窓口の前に立つとにっこり。
「来週の木曜に来てくださいね」
もう、何があっても来ます！ あなたの顔を見るために！
と言いたいのをこらえ、とりあえず私のほうからも最高の笑顔でおかえし。
二人でにこにこ。
なんか変かも。
余談。
無事にビザが片付きそうなので、私は解放感から、映画でも見ようという気になった。モンゴル大使館からそれほど遠くない、渋東シネタワーに行ってみる。やはりここは「スターウォーズ＜特別編＞」しかないだろう、と思ったが、残念ながら時間が悪かった。待たずに見られるのは「レリック」だけ。良く知らないが、恐い映画らしい。とりあえず見てみる。
それがまた、最低。唐突に「どかーん」とやって観客をおどかすだけの、超低能映画。勘弁してほしい。あんな映画に１８００円払ったかと思うと、泣けてくる。
滝澤（1997/07/10）
このページの作品に対するご意見・ご感想などは、E-Mail : maniactaki＠gmail.comまでお願いいたします。
※スパム対策のために「＠」を全角にして掲載しています。半角に直してお送りください。