『色づく日々』
いつの間にか春になっていた。そう思っているうちに、もう桜の季節も終わってしまっている。時間が過ぎるのは速い。
久しぶりに晴れた週末、ちょっとぶらついてみる。草木が色づいて見えた。
「色づく」とは、うまい言葉だと思う。冬のくすんだ色から比べて、この季節は鮮やかな色が「ついて」いるのだ。木の葉の緑もまぶしい。草には色とりどりの花が咲いている。心なしか、太陽の光さえも冬より明るく見える気がする。
日本語にはこんなに素敵な表現があるのだ、と思うと、小説を書く気力も湧いてくるというものだ。描きたいものはたくさんある。そのための道具である言葉も、たくさんある。すばらしいことではないか。
色のように目で具体的に見えるものを、文章で表現するのは難しい。そのかわり、「色づく」というような言葉で、読者に想像してもらうことは容易にできる。この作業、なかなか楽しいもので、一度味をおぼえるとやめられなくなってしまうものだ。
これだから、小説を書くことにもついつい色が出てしまう。
色。
いいねえ。
滝澤（1997/04/13）
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