『天使の輪・三角の布』
日本人は宗教に頓着しない民族だという。仏壇と神棚を両方拝み、クリスマスを祝う。まあ、世間一般によく言われていることだ。
先日、テレビのコマーシャルでこんなものを見た。
仏壇のコマーシャルである。「死んだ人（幽霊？）」役の老人が三名、仏壇に拝んでいるの女の子を見ながら話をしている。老人のうちの一人の孫らしいこの女の子が拝んでいるのは、最近の住宅事情に合わせた省スペース型の最新仏壇。孫娘に最新仏壇を通して拝んでもらっている老人は、他の二人の老人にうらやましがられている。
内容はそれだけで実につまらないものなのだが、私はこの三人の老人たちの扮装に驚いた。
死んだ人の扮装というと、私はまっさきに頭に三角の布をつけたものを思い浮かべてしまう。「四谷怪談」に出てくるお岩さんのスタイルである。ところが、そのコマーシャルでは、老人たちは天使の輪を頭の上にのせていた。仏壇に天使の輪とは、かなりミスマッチである。
頭では判っていたが、改めて感心してしまった。仏壇に喜ぶ天使。なんともはや。
しかし、別の視点で見ることもできる。
広告というものは、それがたとえ不快なものでも、見る者の記憶に残るものが「勝ち」なのだという。あえて仏壇と天使の輪というミスマッチを選び、見る者の記憶に残ることを選んだのかも知れない。
だとしたら、このテレビコマーシャルを作ったプロデューサーは、なかなかの達人だといえるだろう。
まあ、意図せずに作ったとしても、それはそれですごいことなのかも知れない。その比類なき無神経さは、すごい才能だ。
滝澤（1997/03/09）
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