『空を見上げる』
月が丸い。丸い月というと秋の「中秋の名月」というやつを思い出すが、冷静に考えると、満月はべつに秋だけの専売特許というわけではない。毎月一度は丸くなるものなのだ。そう思ったら、そんなにありがたい感じがしなくなってきた。
とは言え、月の光というのは、実にいい。街灯などいらないほどの明るさで、周囲を照らしている。冬の冷たく澄んだ空気の中、私は久しぶりにのんびりと空を見上げた。
月。
女性の象徴、狼男の変身のきっかけ、満月の夜は犯罪が増える、などなど、いろいろな意味を持っている。私も、じいっと見ていると犯罪を犯したくなるだろうか？
試してみよう。
近くの公園へ行ってベンチに腰を下ろし、空を見上げる。丸い月。ぴかぴか光ってる……。ちょっと吠えてみようかな。でも、近所迷惑だしなあ。
まあ、犯罪を犯そうという気には、なりそうもない。なったら困るのだが。でも、吠えたいと思うということは、何かあるのかも知れない。吠えたくなるのは、小説を書いていて行き詰まった時。
なるほど、新法則発見だ。満月は、小説執筆が行き詰まった時と同じ効果を人体に及ぼす。……しかし、汎用性低そうだなあ。
月が明るいので暗いものは消えてしまっているが、星も見える。オリオンが光っていた。横の三つ星はくっきりと見えるが、残念ながら縦の三つ星は判然としなかった。考えると、パソコン関連の仕事をするようになってから目が悪くなった。
北斗七星は「ひしゃく」として有名だが、実は星が八つある。ひしゃくの柄の部分、端から二個めの星の脇に、暗い星があるのだ。大昔、視力検査に使われたとか。
あー、なんだか話が飛躍して、脈絡がないなあ。これも月のせいだろうか。
あれ？ なんだか寒気がする。それに喉も痛い。風邪ひいたかな。いや、これも月のせいに違いない。おそるべし、満月。
滝澤（1997/02/23）
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