『月を見る』
私は、上弦の月が嫌いだ。
口に見えてしまうのだ。
夜空にぽっかりと浮かんだ、口。
哄笑しているような、何か悪いたくらみが成功して笑っているような、そんな口に見える。私自身が哄笑されているような、知らぬ間に悪いたくらみの犠牲者になってしまっているような、そんな落ち着かない気持ちになる。
イメージとしては、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに出てくる、仮面をかぶった怪人のような印象だ。表情のない目、そして、無気味に笑う口。
そんなのが、空の上に浮かんでいる。
正直、怖い。
関係ない話だが、上限の月と打とうとしたら、「上限のツキ」と変換しやがった。
ちょっとムカつく。
今の状況がツキの上限で、もはやこれ以上の運など期待できない、と言われているようだ。まあ、不幸な人間のほうがいいものを書ける、と言うが。
うれしくない。
まったくもって、うれしくない。
ツキも、月と同じように満ち欠けしてくれれば、いいのだが。
滝澤（2004/01/31）
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