『うつくしいもの』
うつくしいものを見つけました。
近所に、空き地があります。
タバコの吸殻や、お菓子の包装紙が放置されている、きたならしい空き地です。
その空き地に、スギナが密生しています。
「スギナ誰の子ツクシの子」などと言われる、緑色のつんつんとした草。あの、スギナです。
スギナが、その空き地の表面を覆い尽くしているのです。
空き地に生えているのは、スギナだけではありません。
そこここに、タンポポが顔を出し、白い綿毛をふわふわと漂わせています。
ハルジオンの小さな花が咲いています。
そこは狭くきたならしい空き地のはずですが、ふかふかの絨毯のようなスギナの表面に、草花の模様が描かれているように見えます。
まるで緑の大草原に花々が咲き乱れているように見えます。
白い花が風に揺れる様子は、とてもおだやかで、都会暮らしでは忘れてしまっていた何かを思い出させてくれるようです。
きっと、スギナの下には、ゴミが隠れているのでしょう。
でも、普段きたならしいことを知っているからこそ、今の緑に染まった空き地が素晴らしく思えるのです。
季節が流れると、この光景を見られなくなる、という思いが、今の胸のうずきにつながっているのかもしれません。
きれいな表面に隠されて、きたならしいものがあるのですね？
このきれいさは永遠じゃなく、いつか終わるものなのですね？
それでも、心は動くのですね？
だからこそ、私の心は動くのですね？
うつくしいものたち。
運が良ければ、また来年お会いしましょう。
今日、わたしは、うつくしいものを見つけました。
滝澤（2001/04/30）
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