『読書報告 ―ブルース―』
読んだのは『ブルース』。著者、花村萬月。角川文庫、は16-4。
強烈な印象が残った。
この小説に関しては、「感想」というものが書けない。それほど強烈だった。文章技術としては、さほどうまくない。なのに、そこに表現されているものは、心の奥のほうに突き刺さってくる。
「痛い」小説。
この表現が、しっくりくる。
読んでいて息苦しくなるような、小説。
この文庫の解説を、作家の北方謙三が書いている。さすがプロ、見事な表現をしている。私は生来の負けず嫌いだが、ここは素直に負けを認めて、プロが書いた解説の一部を抜粋したい。
―――抜粋―――
こんな書き方で解説にはなりそうにないが、これは読むブルーズなのである。あらかじめある、自由への幻滅が、いつかギターにかき消され、ベースに押し潰され、ドラムで粉々になる。そして、ピュアなものだけが剥き出しになってくる。悲しみが共振する。叫びは呻きにしかならず、涙は笑い声に変る。
そして、塞ぎの虫。
たまらんぜ、萬月。なにが悲しくて、こんな小説を書く。
この小説は、作品論などを拒絶しているのではないか。ただ心を波状的に揺り動かすだけではないか。
―――抜粋おわり―――
この表現が、この作品のすべてを凝縮していると言っていい。
こんな小説は、小説なんて呼べない。
次元が違うのだ。
ひとつだけ確かなことは、この作品を書いた人間がバケモノだ、ということだけだろう。
滝澤の独断と偏見による採点：
文章力：評価不能 / 10点
構成力：評価不能 / 10点
意味性：評価不能 / 10点
娯楽性：評価不能 / 10点
完成度：評価不能 / 10点
合計点：評価不能 / 50点
滝澤（2000/10/01）
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